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第10話

城の裏口から出て、小高い丘を超えると森が広がっていた。
見上げると、天まで届かんばかりのとても大きな樹が目に映った。
「ねぇアリン、あの樹ってまさか・・・」
少し前を歩くアリンに問いかけた。
「そうじゃ、毎朝テラスから見ているあの樹じゃ。」
「うわぁ~こんなに大きかったなんて!天辺が見えないや。」
2人は立ち止まって、雲に隠れれている頂が見えないかと頭を上げた。
「まあ、晴れていたとしてもあれの全容はとても見えぬからの。行くぞ!」
僕は口をポカーンと開けて見入っていた。
「えっ!?あ・・・待ってよアリン~」
慌てて小走りで後に付いて行った。
森の入り口が見えてきた。
そして、2人が森に足を踏み入れた瞬間、風が希夢の顔を撫でた。
「・・・リ・・・すまない・・・私が未熟故・・・」
「そなたの所為ではない、私自身判っていたことなのだ。」
「しかし・・・」

(何?あなたは誰・・・?)質問をしようとしたが、その声は口から発せられず希夢は、見知らぬ1人のエリーンを抱きかかえている。
腕の中の彼女がまた話しかける、希夢の頬に手を添えて。
「あれ子は弱い・・・だから、・・・リ・・ッタ・・・そなたが支えてやってはくれぬか。」
「何を申す、それはあなたの役目!私ではなく。」
彼女は笑って、「頼むぞ・・・」
そして、希夢の頬から手が離れていった。

「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
僕はその場で座りこみ、震える体を両手で必死に押さえていた。
前を歩いていたアリンは驚いて、後ろを振り返り走り寄った。
「希夢、どうしたのじゃ?!大丈夫か?」
震える僕を彼女は優しく包んでくれた。




「落ち着いたか・・・希夢よ?」
「うん、ごめんね・・・アリン、夢の後から何か変なんだ。」
アリンの腕の中がすごく心地よかった。でも、少しだけ夢の中のあのエリーンとダブッた。
「それにこの森、すごく懐かしいんだ・・・可笑しいよね初めて来たのに。」
そう言って、僕は苦笑した。
「気にするでない、その為にここに来たのだからな。」
「うん!行こうか」僕は、立ち上がってアリンの手を引いた。
「そなたに手を引かれるは何か変な気がするの~」
「えぇ~なんだよそれ!」
口を尖らせる僕を見て、アリンが笑い出した。
「希夢に手を引かれると、私がそなたのように頼りなく見えてしまうからの。」
僕はカチンときて、彼女を握る手に力が入った。
痛っ!とアリンが手を振り払おうとするのも許さず続けた。
「何だよ!それじゃ僕がダメで役立たずな奴ってこと?」
「痛いぞ希夢、離さぬか!そなたらしくないぞ?いつもならサラっと流すくせに!」
アリンの顔が本当に痛いと訴えていることに気付き、僕は手を離した。
「ご、ごめん!!!大丈夫?やっぱり今日の僕・・・おかしいよね・・・」
「いや、謝るのは私のほうだ少し調子にのりすぎた・・・許せ。」
僕はもう一度、アリンに手を差し出した。今度ゆっくりと優しく。
アリンは力強く握り返して立ち上がり、真剣な眼差しを向けてきた。
「希夢よ、そなたは私にとって・・・いや、我らにとってなくてはならない存在だ!決して役立たずなどではない。それだけは判って欲しい。」
そう言って、彼女はクルっと踵を返し歩き出した。
「さて、そろそろ行くかの。」
僕は胸の前で左手をグっと握り・・・
「僕はもっと役に立ちたい!もっとアリンの為に・・・だって僕は君のことを・・・」
「ん?何か言ったか?」
「ううん、何も!行こうか」
2人で森の中に入っていった。




「着いたぞ希夢、これが我らが大事にしておる世界樹じゃ」
アリンが教えてくれたが、僕の耳には入っていなかった。
また目に涙が溢れ、ゆっくりと世界樹に近づいた。
「お、おい・・・希夢どうしたのじゃ?」
僕は自分で涙を止めることも、歩みを止めることが出来なかった。
まるで誰か、別の人間が僕の体を動かしているようだった。
アリンも事態が飲み込めず、ただ見ていることしか出来ないという様子だ。

僕じゃない誰かが、目一杯両手を広げて世界樹に抱き言った。
「ただいま・・・サイ!」
世界樹は静かに答えた。
「おかえり、ヴァリエッタ」
その瞬間、アリンの目が憎しみで満たされていく。
「ヴァリエッタだと・・・・」

「あ、あれ?僕今・・・何て?」
金縛りから開放されたような感じで、自分の意思で体が動くようになった。
すると、後ろからアリンの声が聞こえた・・・しかしその声はいつものアリンではなく恐怖に・・・憎しみの声にも聞こえた。
「ね、ねぇ・・・アリン・・・今、僕何を言ってた?」
だが、アリンは僕の問いには答えず下を向き、肩は振るえ手は強く握り締められていた。
「希夢があのヴァリエッタだと・・・サイアトール、嘘だと言え!」
彼女はキっ!と世界樹のサイアトールを睨みつけた。しかし、世界樹の答えはアリンの望む物ではなかった。
「アリンよ、この希夢はあのヴァリエッタの生まれ変わりだ。生まれ変わりという言葉が正しいかは微妙でもあるが、確かにこの者は彼女の魂を持っておる。」

2人の会話が理解出来ない僕は、アリンの肩に手を伸ばした。でも、彼女はそれを振り払い怒りに満ちた目を僕に向け言った。
「触るな!この人殺し!」
「え?何言ってるのアリン、僕はそんな・・・」
再度、彼女に近づこうとする僕にアリンは
「近寄るな!」そう言って、走り去っていった。
振り向きざま、アリンの目に涙が溢れるのが見えた。
「そ・・・んな・・・僕が・・・人殺し・・・?」
彼女を追いかけることも出来ず、その場にへたり込んでしまった。



~つづく~
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